「名義貸し」とは何か:緑ナンバーのトラックを貸し借りするときの境目
この記事のポイント
- 運送事業の許可を持つ会社が、その名義を他人の運送事業に使わせること、自社の名前で他人に事業をさせることは禁止されている(貨物自動車運送事業法 第28条)。
- 違反すると、名義を貸した側も3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金、またはその両方の対象になる。会社も罰金の対象になる。
- トラックを借りて緑ナンバーで走らせるなら、借りる側が車検証の使用者になり、増車の届出を出し、自社の運行管理で走らせる。
※登場人物は架空のキャラクターです。内容は2026年10月時点の法令にもとづきます。個別のケースが当たるかどうかは、管轄の運輸支局にご確認ください。
ゲンさん、この前「名義貸しは禁止」って聞いたんですけど、名義貸しって、具体的にどういうことですか?
いい質問だ。緑ナンバーの世界じゃ、いちばん重い違反の1つだぞ。
そんなに重いんですか。
ああ。名義を借りた側だけじゃなく、貸した側も罰せられる。
名義貸しを禁じる法律
どの法律で決まってるんですか?
貨物自動車運送事業法の第28条だ。2つのことを禁じてる。
- 運送事業の許可を持つ会社が、その名義を、他人が運送事業をするために使わせること(第1項)
- 事業を貸すなど、どんなやり方であっても、他人に自社の名前で運送事業をさせること(第2項)
「名義を使わせる」と「自分の名前で他人にやらせる」。似てますね。
どっちも、許可を持っていない人が、許可を持っている会社の看板で運送をする、ってことだ。緑ナンバーの許可は、会社ごとに、運行管理や車の整備、事故のときの責任まで含めて審査されて出てる。その看板を他人に貸したら、審査の意味がなくなるだろ。
罰則は、貸した側にも
違反したら、どうなるんですか?
名義を貸した者は、3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金、またはその両方だ(同法 第70条第2号・第3号)。会社の業務としてやったなら、会社にも罰金が科される(同法 第80条)。
借りた側は?
許可を持たずに運送事業をしたことになる。無許可の経営も、同じく3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金だ(同法 第3条・第70条第1号)。それに、法律に違反した運送会社は、車の使用停止や事業停止、許可の取り消しといった行政処分の対象にもなる(同法 第33条)。
貸した側も借りた側も、ただでは済まないんですね……。
どこからが名義貸しになる?
でも、トラックを貸し借りすること自体は、ありますよね? どこからが名義貸しなんですか?
境目は、誰がその運送の責任を持っているかだ。たとえ話で言うとな。
- うちの緑ナンバーのトラックを、許可を持たない知り合いに渡して、その人が自分で仕事を取って運ぶ → 名義を他人の運送事業に使わせている
- 許可を持たない人に、営業所の運送の仕事を丸ごと任せて、外からはうちの会社が運んでいるように見せている → 自社の名前で他人に事業をさせている
どっちも、うちは名前を貸してるだけで、実際の運送の管理をしていないんですね。
そういうことだ。どこまでが当たるかは個別の事情しだいだから、迷ったら運輸支局に相談だ。
運行管理だけを任せるのも、許可が要る
じゃあ、「運送はうちでやるけど、運行管理だけ外の人に任せる」はどうですか?
それも勝手にはできない。運行の管理などの輸送の安全に関わる業務の管理を、よそに任せたり、よそから引き受けたりするには、国の許可が要る(同法 第29条)。許可なしでやると、150万円以下の罰金の対象だ(同法 第74条第2号)。
安全のことは、許可を持っている会社が自分で責任を持つのが基本なんですね。
適法にトラックを借りて走らせるには
じゃあ、繁忙期にトラックを借りて増やしたいときは? それも名義貸しになっちゃいますか?
やり方を守れば大丈夫だ。ポイントは3つある。
- 車検証の使用者を、借りる側(うち)に変える。
- うちが増車の届出を出して、うちの営業所のトラックにする。
- うちの運行管理者の管理で、うちの運転者が走らせる。
自家用の車を商売として貸すにはレンタカーの許可が要るが、借りる人がその車の使用者になるなら許可は要らない、と道路運送法の第80条に決まってる。借りたトラックでも、使用者も運行管理もうちなら、うちの事業としてちゃんと走らせられる。
「名前だけ」じゃなくて、中身も全部うちが持つ、ってことですね。
そのとおり。増車の届出の流れは緑ナンバーのトラックを増やすときの「増車届」の流れと注意点で話したから、あわせて読んでおけ。
はい! 名前を貸すのも借りるのもだめ、借りるなら中身ごと、ですね。
まとめ
- 運送事業の許可を持つ会社が、その名義を他人の運送事業に使わせること、自社の名前で他人に事業をさせることは禁止されている(貨物自動車運送事業法 第28条)。
- 名義を貸した者は3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金、またはその両方の対象になり(同法 第70条)、会社も罰金の対象になる(同法 第80条)。借りた側も、無許可経営として同じ罰則の対象になる。
- 運行管理などの安全に関わる業務の管理をよそに任せるには、別に許可が要る(同法 第29条)。
- トラックを借りて緑ナンバーで走らせるなら、借りる側が車検証の使用者になり、増車の届出を出し、自社の運行管理で走らせる(道路運送法 第80条)。
カリトラの緑ナンバーレンタルは、車検証の使用者をお客さまに変更し、お客さまが増車の届出を出して運行する賃貸借の形です。東海3県と静岡県西部の運送事業者さまが対象です。くわしくは緑ナンバーレンタルのページをご覧のうえ、お問い合わせからお気軽にご相談ください。
出典(2026年10月15日に確認)
- 貨物自動車運送事業法(e-Gov法令検索):第3条・第28条・第29条・第33条・第70条・第74条・第80条
- 道路運送法(e-Gov法令検索):第80条